考える。
TDCセンサの構造はエレキギターのピックアップと同じ。ギターで言う弦にあたるタイミングロータが回転することで磁界が乱されて交流電圧を発生する。フレミング右手の法則だ。
そんな関係のTDCセンサとタイミングロータを2mm離すことで起こること、それはセンサからの出力電圧が下がる以外の何物でもない。逆に言えば、離さない状態ではセンサからECUに不調を起こすほど過大な電圧がかかってる、っていうことになる。これなら高速で症状が悪化するのも説明がつく。電磁誘導の原理で、高速回転下ではセンサの出力も上昇するからだ。
となると、この出力電圧を一定に抑え込めれば改善するんじゃなかろうか?部屋のガラクタ箱を漁ってみる。
定格電圧2Vのツェナーダイオードが何本もあった。ツェナーダイオードは和名では定電圧ダイオードと呼ばれるように、定格電圧を超えると逆方向に電流が流れ出す性質を持っている。
こいつ2本を逆方向に並列に繋ぐ。
それをECUのコネクタ47、48ピンに繋がっているTDCセンサの配線の間に並列に入れてやった。つまりダイオードクリッパ回路を付け加えたのだ。これでTDCセンサからの電圧はp-p2V以上になることはない。
これまたギターのエフェクタである『ディストーション』ではおなじみの回路だ。エレキギターの知識がいろいろ生きてくるから面白い。
エンジンをかけてみる。一発始動。町内をひと回りしてみる。時々起こっていた2,000回転あたりでの息継ぎは全く起きない。いいぞ。
オシロスコープで波形を見てみた。
よし、ダイオードクリッパ回路が完全に効いてて、波形はきっちり揃ってるぞ。
思い切って高速道路に乗り出してみた。うん、全く息継ぎもなく100km/hまでスムースに加速!
その後、高速と街乗り合わせて200kmほど走ってみたけど、快調快調!
しかし、何でこんなことが起こったのだろうか。。。
原因として考えられることと言えば、あの異物侵入によるミッション破損だ。タイミングロータはトルクコンバータのすぐ隣にあるから、侵入した異物と破損したミッションの破片がタイミングロータにも何らかの悪影響を与えたのかもしれない。ミッション交換の時にもっとよくタイミングロータを観察しておくべきだった。
2mmほどのわずかな偏心が起こって、その上ロータの歯が部分的に磨耗していると考えるのが妥当じゃなかろうか。
これを完治するにはまたミッションを降ろさなくちゃなんない。当面はこのまま走ってみようと思う。信号波形自体は本来より遥かに安定してるんだし。
不調発生から1年9ヶ月、とりあえずこれで完治ってことにしたいと思う。